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東京高等裁判所 昭和33年(ラ)819号 決定 1959年4月01日

抗告人 株式会社茨城相互銀行

主文

本件抗告を却下する。

理由

抗告の趣旨及び理由は別紙記載の通りである。

そして本件は、滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律第八条による強制執行続行の申請却下の決定に対する抗告事件であり、同法第九条第四項の規定からすれば強制執行続行の決定には不服の申立が許されないのであるが、その申請を却下した決定に対しては不服を申立て得るものと解するのが相当である。しかしこの不服はやはり強制執行の手続において口頭弁論を経ずして為すことを得る裁判に対する不服として民事訴訟法第五五八条による即時抗告によるべきものと解すべきである。

ところが本件にあつては、原決定(昭和三三年一一月二八日附申請却下の決定)が抗告人に送達せられたのは同月二九日であり、本件抗告状が原裁判所に到達したのは同年一二月一二日であること本件記録上明白なところであつて、本件抗告は抗告期間経過後に申立てられた不適法なものといわざるを得ない。ただ本件にあつては、右の原決定は同年一二月八日附の決定を以て更正せられており、その更正決定が抗告人に送達せられたのは同月九日のことであつて、この更正決定送達の日を起算点とすることができれば右の不適法は救われるわけである。しかし、右更正決定はただ原決定の当事者の表示中債権者の表示が抗告人とせられていたのを本件強制競売の申立債権者である栃木マツダ販売株式会社に改め、また事件の表示を、抗告人から申立てて本件強制競売事件の記録に添付せられた不動産任意競売事件の表示から本来の強制競売事件の表示に改めただけであつて、抗告人からする強制執行続行申請に対する裁判としては元の決定と後の更正決定とが一体を為すものとはいえ、その裁判の内容自体の点からいえば、更正決定により元の決定に対して何等の変更も加えられたものではなく、抗告人の申請に対する裁判所の応答としての裁判内容は元の決定によつて十分これを知る得るところであり、若しこの裁判内容に不服があるとすれば(抗告人が本件抗告理由で主張するところもこの裁判内容についての不服である)、当然右元の決定送達の時からこれをいい得る性質のものと考えられるところであるから、本件抗告の抗告期間は、当初の決定送達の日からこれを起算すべきであり、更正決定送達の日を以てその起算点とすることはできないものと解しなければならない。

なお本件抗告中には原更正決定だけに対するものも含まれているやに考えられ、この抗告は抗告期間の点においては何等の不足もないものであるが、右更正決定の内容は前記の通りであり、この更正決定そのものだけに対する抗告は、抗告として何等の意味も持たないものと解するの外はないところであるから右抗告はこの意味において却下を免れない。

よつて本件抗告はすべてこれを却下すべきものとし、主文の通り決定する。

(裁判官 薄根正男 村木達夫 山下朝一)

抗告の趣旨

原決定はこれを取消す。

抗告人からなした強制執行続行の決定申請は理由がある。

との決定を求める。

抗告の理由

一、本件抗告事件の当事者及本案事件の表示は左記の通りである。

(一) 当事者の表示

債権者 栃木マツダ販売株式会社

債務者 坂本儀貞

第二競売申立債権者 株式会社 茨城相互銀行(抗告人)

(二) 本案事件の表示

宇都宮地方裁判所栃木支部昭和三三年(ヌ)第六号不動産強制競売申立事件

二、抗告人は右本案事件の目的である不動産に対して宇都宮地方法務局壬生出張所昭和二十六年十二月七日受付第一六七〇号登記の抵当権を有して居るところ、昭和三十三年六月二十一日右抵当権の実行として競売申立て(右裁判所昭和三三年(ケ)第八号事件)たが民事訴訟法第六四五条の準用により右本案事件の執行記録に添付することにより配当要求の効力を生じ若し本案事件の競売手続が進行を中止したときはその競売手続は第二の申立である抗告人申立の抵当権実行の為にする競売の申立により開始したと看做され、其の儘続行すべきのである。

(大審院判例昭和六年(ク)第一二八四号昭和六年十月二十三日民事部決定、同昭和六年(ク)第一二七九号昭和六年十一月十三日五民事部決定等参照)

三、そして抗告人は栃木税務署へ催告書或は抗告人方行員を出張せしめて、差押の解除又は公売の促進を要望したが、依然応じないので滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律第八条、第十七条の規定の適用を受けるべく右裁判所へ続行決定の申請をしたものである。

四、然るに右裁判所は右申請に対し原決定表示の決定をなし、その理由として(原決定に於てその理由の記載はないが、以下十二月六日右裁判所へ抗告人方行員飯島芳夫を派遣した際及び同月九日同管理課長森田清の電話照会による回答)庁用の民事裁判資料六十二号五十八頁記載「滞納処分による差押後に強制競売開始の決定がされた不動産に対し、その後さらに行う競売法による競売については、本条の適用はなく記録添付に関する規定が準用される」を引例して抗告人は本件続行申請をする資格を欠くとの事である。

五、右は斯る場合に於ては右調整に関する法律第十二条に規定するに拘らず、同一の不動産につき二重の競売手続を開始することを無用とし民事訴訟法第六四五条の記録添付に関する規定を準用すると言う趣旨に外ならず。

六、更に第一項記載の判例の趣旨並びに右調整に関する法律制定の目的即ち私債権の実行の円滑化を図り、併せて租税等の公債権徴収の合理化に資するため両者の執行手続の調整措置を講ずるにあることにより本件続行決定申請を却下する理由はない。

よつて本件抗告に及ぶ次第である。

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